職場における発達障害がある方への合理的配慮と支援者を支える仕組み

 

合理的配慮を知っていますか?

合理的配慮とは、障害のある人にとっての社会的なバリアを取り除くための環境調整や配慮のことをいいます。

 

社会全体で障害者雇用が進むなか、職場において「発達障害のあるメンバーと一緒にどう働くか」「どんな配慮をすれば互いに働きやすくなるか」と悩む声が増えています。

 

しかし、現場で良かれと思って対応していても、特定のサポート担当者だけに負担が偏り、支援側が疲れ果ててしまうケースも少なくありません。

 

この記事では、産業保健師の視点から、職場における「ケース別の具体的な合理的配慮」と、支援側の疲弊を防ぐ「チームで支える仕組みづくり」、そして近年の障害者雇用の動向について解説します。

 


 

目次

❚ケース別!職場での「合理的配慮」の具体例

❚支援者のバーンアウトを防ぐ!チームで支える仕組みづくり

❚なぜ今「合理的配慮」が求められるのか?

❚まとめ

 


ケース別!職場での「合理的配慮」の具体例


 

発達障害(ASD・ADHD・SLDなど)の特性は人それぞれ異なります。

「障害名」で一括りにするのではなく、「どのような困りごとがあるか」に応じた環境調整(合理的配慮)を行うことが大切です。

 

ケース1|口頭指示や曖昧な表現で混乱しやすい人

困りごとの傾向

一度に複数のことを言われると忘れてしまう、「適当にやっておいて」「早めに」などの抽象的な指示が理解しにくい

 

配慮の具体例

・指示はチャットやメール付箋に書くなど「文字」で記録に残して渡す

・「15時までに、AファイルのデータをExcelの指定欄に入力する」など、期限・数字・作業手順を具体化する

・あらゆる場所に使い方やルールを貼るなどヒントを残す

 

 

ケース2|音や周囲の視線で集中が途切れる人(感覚過敏)

困りごとの傾向

電話の鳴る音、周囲の話し声、人通りが気になり作業効率が著しく落ちる

 

配慮の具体例

・業務中のノイズキャンセリングイヤホンや耳栓の着用を許可する

・パーテーションで囲まれた席や、集中スペース(空き会議室等)での作業を認める

 

 

ケース3|急な予定変更やマルチタスクでパニックになる人

困りごとの傾向

割り込み業務が入るとパニックになり、優先順位が分からなくなる

 

配慮の具体例

・業務は「1度に1つずつ」渡す(シングルタスク化)

・割り込み業務が入った場合は、上司やキーパーソンが「既存作業を中断して、こちらを最優先で」と優先順位の整理を行う

 

 


支援者のバーンアウトを防ぐ!チームで支える仕組みづくり


 

合理的配慮を提供する際、最も避けるべきは「理解のある特定の担当者ひとりに負担が集中すること」です。

支援者が抱え込み、疲れ切ってしまうのを防ぐため、組織全体でサポート体制を整えましょう。

 

 

「1人担当制」をなくし、主担当・副担当を配置する

「〇〇さんのことは〇〇さんしか分からない」という状態を作らないことが基本です。

主担当・副担当を設定し、業務マニュアルや配慮ポイントを可視化して共有しておくことで、担当者の不在時にも現場が回る体制を作ります。

 

 

定期的なケース会議で「配慮内容」をアップデートする

週1回や月2回など、短時間のミーティングを設定します。

「うまくいっていること」「新しく困ったこと」を振り返り、配慮内容を常に更新していきます。

配慮は一度決めたら終わりではなく、状況に合わせて柔軟に変えていくものです。

 

 

外部の専門機関(社外リソース)と連携する

自社だけで解決しようとせず、障害者職業センター、就労定着支援事業所、ジョブコーチなどの専門家を頼りましょう。

第三者的な視点からアドバイスをもらうことで、社内スタッフの心理的負担を大きく減らすことができます。

 

 


なぜ今「合理的配慮」が求められるのか?


 

現在、日本の障害者雇用を取り巻く環境は大きく変化しています。

 

 

法的義務化の広がりと雇用率の引き上げ

職場での合理的配慮は障害者雇用促進法により2016年から事業主の義務とされており、2024年4月には改正障害者差別解消法の施行で、顧客など対外的な場面でも事業者の義務となりました。 

また、法定雇用率も段階的に引き上げられており、多くの企業で障害のある方の採用と定着が急務となっています。

 

「数合わせ」から「定着と活躍」の時代へ

単に採用するだけでなく、「いかに安心して長く働き続けられるか」が企業の重要課題です。

合理的配慮は特別な優遇ではなく、その人が持つ本来の能力をフラットに発揮するための環境調整となります。

 

 


まとめ


 

発達障害のある方へのサポートは、個々の特性に応じた具体的な配慮と、それを支える側の疲弊を防ぐ「チーム体制」があってこそ継続できます。

 

サポーターひとりに無理をさせず、産業保健師や外部機関、職場全体で手を取り合いながら、誰もが働きやすい環境をつくっていきましょう。

 

 

キーワード:発達障害|合理的配慮|支援者|職場


 

参考文献・参考サイト

1)厚生労働省:合理的配慮指針

2)内閣府:障害者差別解消法リーフレット

3)独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構:「はじめての障害者雇用〜事業主のためのQ&A〜」