【助産師解説】出産前に知っておきたい、ママもパパも誰でもなりうる『産後うつ』!

 

産後のママ、パパの気がかりとして、産後うつを心配する方は多いのではないでしょうか。

 

ストレス社会の現在、精神疾患を抱えている方は増え続けています。

妊娠中、産後は、女性ホルモンの影響や、身体や環境の変化等から、特にメンタル不調をきたしやすい時期と言われています。

 

産後1か月のママの約7人に1人が産後うつ病を発症すると言われています。

 

さらに、最近ではパパの産後うつも心配されるようになってきています。

ママもパパもなりうる産後うつですが、今回はママのことを中心にお伝えしていきます。

 


 

目次
「マタニティブルー」と「産後うつ」の違いは?

「産後うつ」発症の要因
「産後うつ」のセルフチェック
まとめ

 


「マタニティブルー」と「産後うつ」の違いは?


マタニティブルーと産後うつ、どちらも聞いたことがある言葉かもしれませんが、違いがよくわからない方も多いのではないでしょうか。

まずは、それぞれの症状や特徴を見ていきましょう。

 

 

マタニティブルーとは

 

出産後の女性の30~50%が経験すると言われています。

出産後、数日から2週間程度のうちに現れる精神症状のことを言います。

 

多くは、不意に涙が出て止まらなくなったり、イライラしたり、

何気ない一言で落ち込んだり傷ついたりする等の症状が出ます。

人によっては、情緒が不安定、眠れない、集中力がない、焦る気持ちになることもあります。

 

なかには、妊娠中からこのような症状が現れる方もいらっしゃいます。

妊娠中の気分の落ち込みや不安感、焦り感なども、妊娠をきっかけとして起こることがあるのです。

 

原因としては、新たに始まった赤ちゃんとの生活の変化や、

育児手技や授乳などが思うとおりに進まないことに対するジレンマなどもありますが、

急激な女性ホルモンの変化によって症状が現れると考えられています。

「ホルモンの変化」が大きく影響しており、出産後の生理的なものと考えられています。

 

症状は一過性のもので、産後10日程度で軽快しますので、「ホルモンの影響」と理解しつつ、

ご主人や家族、お友達、助産師などに話を聞いてもらったり、リフレッシュできる時間を作るなど、

一人で抱え込まず周りのサポートを積極的に受けながら過ごしてください。

 

 

産後うつとは?

 

産後うつとは、一過性のマタニティブルーとは異なり、気分の落ち込み、楽しみの喪失、自責感や自己評価の低下などの精神症状が2週間以上持続します。

 

産後3か月以内に発症することが多いと言われていますが、

最近の調査では、産後1年時にも、産後1か月時と同等の割合で、産後うつ症状があるママがいることがわかっています。

産後長期的に産後うつになる可能性は潜んでいるのです。

 

そして産後に発症する「産後うつ」の約50%は、妊娠中からうつ症状を発症しているというデータもあります。

妊娠中から、産後長期にわたって、メンタル不調が起こりやすくなるということを理解し、不調を感じたときには、できるだけ早く専門家に相談しましょう。

 

 


「産後うつ」発症の要因


産後うつ発症には、様々な要因が関係しています。

感情をコントロールする脳の神経伝達物質や遺伝、ホルモンの変化、環境などが関連していると言われています。

 

具体的には、妊娠中では、不安、過去のうつ病歴、サポートの不足、望まない妊娠、家庭内暴力、低収入、喫煙、未婚、対人関係不良などがリスク因子として考えられています。

産後は、過去のうつ病歴、妊娠中のうつ症状や不安、配偶者からのサポート不足などが影響すると言われています。

 

産後の女性は特に、頻回な授乳や育児により睡眠不足となりやすいことに加え、

授乳や育児が思ったようにいかないなど「母親」としてのプレッシャーを必要以上に感じてしまう等、

身体的にも精神的にも疲弊し、精神症状の発症につながることがあります。

 

 


「産後うつ」のセルフチェック


「最近気分の落ち込みが強い」「眠れない」「もしかして産後うつかも?」等の体調や気分の変化を感じているときには、まずは、セルフチェックをしてみましょう。

 

  • 疲労感、不眠
  • 不安、緊張、パニック
  •  自然と涙が流れる
  •  イライラする
  •  希望を持てない
  •  集中力や記憶力の低下
  •  気分が変化しやすい
  •  せかせかする
  •  以前は楽しめていたことが楽しめない
  •  自分を責める
  •  自分を情けなく思う
  • 食欲がなくなる
  •  子どもや夫に愛情を感じなない、持てない

 

チェック項目が多くあてはまる場合には、「産後うつ」の可能性があります。

 

「なぜかうまくいかない」、「気分が落ち込んだり、やる気が出ず怠けているようだ」など理由のわからない症状で悩んでいる方は、一度専門家に相談してみてください。

心療内科に受診することができれば良いですが、難しい場合には、まずは出産した産科の先生や助産師に相談してみましょう。

 

産後うつは、重症化してからでは、症状や治療が長引いてしまうことがあります。

早期に受診をし、治療することがとても重要になります。

 

 


まとめ


ここまで産後うつについてお伝えしてきました。

妊娠、出産、育児は、ライフステージの大きな変化です。環境の変化に伴い、気持ちの変化が現れるのは当然のことです。

ママだけでなく、パパにとっても大きな変化になります。

ご自身の体調や、心の変化を無視せず、お一人で悩まずに専門家に頼ってみてください。

 

 

文京学院大学が作成・発表した「ママから笑顔がきえるとき」という産後うつ予防啓発のための動画があります。

妊娠中から産後の生活をイメージし、準備をしておくことで産後うつは予防できますので、ぜひこちらも参考にしてみてください。

 

 

 

キーワード:マタニティブルー|産後うつ|要因|セルフチェック


参考文献
・厚生労働省 患者調査
・東北メディカルメガバンク機構「産後 1 年までのうつ症状の推移と心理社会的要因との関連:三世代コホート調査」
・周産期メンタルヘルスコンセンスガイド 日本周産期メンタルヘルス学会
・公益社団法人日本産婦人科医会ホームページ https://www.jaog.or.jp/
・産後うつ予防啓発リーフレット・動画「ママから笑顔がきえるとき」文京学院大学 https://www.bgu.ac.jp/health/news/20171122-2/


執筆者:高橋萌

2024.03.01