境界性パーソナリティ障害は、成人期早期または青年期に発症することの多い、精神疾患の一つです。
英語では、Borderline Personality Disorder、略してBPDとも呼ばれています。
妊娠による身体の変化や感情の揺れに加えて、BPDの症状が伴うことにより、精神的な負担が重くなるということも考えられるのです。
今回は、境界性パーソナリティ障害の特徴や向き合い方について分かりやすく解説していきます。
目次
❚まとめ
BPDの主な特徴と妊娠中の影響
感情の揺れやすさ
BPDの代表的な特徴の一つが、気分の不安定さです。
妊娠中はホルモンの影響や生活の変化などにより、誰しも感情の変動が起こりやすいものです。
ですが、BPDを持つ妊婦さんは特に注意が必要となる場合があります。
例えば、気分良く過ごしていても、ほんの小さな出来事で大きな不安や怒りを感じることがあり、時には冷静さを失ってしまう可能性があるかもしれないのです。
この感情の波は、妊娠という生活の変化によって強まってしまう傾向があります。
人間関係への不安
BPDを持つ方は、他者との関係性において「見捨てられるのではないか」という強い恐怖を感じやすい特徴があります。
妊娠中は、家族やパートナーとのコミュニケーションが重要となります。
ですが、他者との関わりに対する不安が強いことにより、孤独感を感じやすかったり、不安が大きく膨らんでしまうことがあります。
自己イメージの不安定さ
妊娠中はさまざまな身体の変化が起こります。
体重の増加や外見の変化をなかなか受け入れられないという妊婦さんも多いですが、BPDを持つ女性は自己イメージの不安定さが強く表出されます。
体型や外見の変化に対して「自分はとても醜い」と感じたり、体調の不安定さによって動けないことが続くと「自分は価値がない」といった否定的な考え方をするようになり、自己評価が著しく低下する場合があります。
衝動的な行動
BPDの症状には、衝動的な行動が含まれることがあります。
妊娠中のストレスや不安により、怒りのコントロールが容易ではなかったり、自殺行動、自傷行為などの衝動が強まる可能性もあります。
この性質は特に注意が必要でとなります。
BPDへの向き合い方
- 専門家からの治療を継続する
妊娠中も、心理療法を続けることが非常に重要です。
ダイアレクティカル行動療法(DBT)や認知行動療法(CBT)は、感情のコントロールや衝動的な行動の抑制に効果があります。
自己管理のスキルを学び、妊娠期間中の不安定さを軽減することも期待できます。
また、妊婦さんに特化したカウンセリングを受けることで、妊娠特有の悩みにも対応することができるのです。
- 周囲からのサポートを受ける
パートナー、家族、友人からの協力は、妊娠期間を乗り越える上でとても大切なことです。
BPDを持つ妊婦さんの場合、特に「安全な場所」だと感じられる居場所が必要です。
妊娠中のBPDを専門とする支援グループやオンラインフォーラムに参加することも有効的です。
同じ悩みを抱える人との繋がりは、孤独感を抱えやすい方にとって心の支えとなります。
- 心を癒す方法を見つける
ストレス管理の為に、自分に合った癒しの時間を積極的につくっていきましょう。
例えば、次のような方法が効果的です。
- 音楽やアートを楽しむ
ストレスに効果のある音楽を聴いたり、絵を描いたりすることで、感情を穏やかにすることができます。
創作活動は、ストレスを解消するだけでなく、自分を表現する手段にもなります。
- 軽い運動をする
ウォーキングや妊婦さんでもできるエクササイズは、心身をリフレッシュさせます。
また、適度な運動はホルモンバランスを整える効果も期待できます。
- 自然に触れる
緑豊かな公園や海辺を散歩することで、気分がリセットされることがあります。
自然の中で過ごす時間は、心の落ち着きを取り戻す助けとなります。
まとめ
境界性パーソナリティ障害を持つ妊婦さんにとって、妊娠期間中は精神的にも身体的にも多くの苦悩があるかと思います。
しかし、専門的な治療を受けたり、周囲からの助けをかりることで、穏やかで安心した妊娠生活に変化させることもできます。
自分に合ったストレス解消法を見つけることも重要なポイントです。
お腹の赤ちゃんもそうですが、何より自分自身を大切にしながら、「誰かに頼ってもいいんだ」と穏やかな気持ちでお過ごしいただけたらと思います。
執筆者:Dr.MTG