生理が遅れると「妊娠したかも!?」と期待したり不安になったりすることがあります。まずは妊娠を疑う方が多いかもしれませんが、生理が来ない理由は妊娠以外による可能性もあります。その一つとして「想像妊娠」というものがあります。
想像妊娠の原因や症状、妊娠検査薬のタイミングなどを紹介します。
目次
❚まとめ
想像妊娠ってホントにあるの?
本当は妊娠していなくても、身体に妊娠兆候のような症状が現れる「想像妊娠(偽妊娠)」が起こることがあります。
医学的には「偽妊娠」といい、症状の発症や経過にこころの状態が密接に関与し、身体的な症状を引き起こす心身症の一つと考えられています。
想像妊娠の原因
原因は、妊娠に対する強い精神的ストレスにより、ホルモンバランスや自律神経が乱れるためとされています。
強い妊娠願望や妊娠に対する焦り、流産の経験や不妊治療を頑張っている方に多くみられます。
また、今は妊娠したくないけれど妊娠したかもしれないという妊娠への不安や恐怖がある場合にも、精神的ストレスとなり、妊娠兆候のような症状が出ることがあります。
想像妊娠の症状は?
想像妊娠では、月経前症候群や妊娠初期に起こりやすい症状と似たような症状が現れることがあります。
- だるさや眠気が強い
- おりものが増える
- 月経が遅れる、止まる
- つわりに似た吐き気
- 胸がいつもより張る
等の症状が現れることがあります。
妊娠か想像妊娠かの見分け方
- 妊娠したかも?と思ったら基礎体温を
妊娠が成立している場合には、排卵から約2週間は、基礎体温の高温期が続きます。妊娠をしていない場合には、月経予定日ころに低温期へと戻ります。
普段測定していない方は、「妊娠したかも?」と思った時点から測定を始めてみてください。高温期が続くのか、低温期へと変わるのかで鑑別ができます。
基礎体温測定は通常の体温計とは異なり、婦人体温計というもので測定します。毎朝起きたら寝たままの状態で布団の中で測定します。ドラックストアなどでも購入することができます。
- 妊娠検査薬
妊娠初期のような症状があったとしても、想像妊娠の場合、妊娠検査薬で陽性になることはありません。妊娠していないと分かったとたん月経が来ることもあります。
妊娠検査薬のタイミングは?受診のタイミングは?
妊娠したか気持ちが焦ってしまい、早めに検査をしたくなりますよね。しかし、正しい結果を知るためには、適切な検査時期に検査をすることが必要です。
また、妊娠検査薬で結果が分かったことで安心し、産婦人科受診が遅れてしまう方もいらっしゃいます。受診の遅れで、危険な状態になってしまうこともあるので受診のタイミングについても知っておきましょう。
妊娠検査薬使用の適切なタイミング
妊娠検査薬は、尿中のhCGというホルモンに反応します。
このhCGは、妊娠維持にとって大きな役割を果たしており、妊娠週数によって尿中のhCG量に違いがあります。そのため、検査をするタイミングが大変重要になってきます。
製品によっても検査可能時期は異なるので、使用方法をよく確認してから使いましょう。また、一度陰性でも、その後月経が来ない場合は、再検査をすることをおすすめします。
- 早期妊娠検査薬
早く結果が知りたい方は、早期妊娠検査薬というものもあります。少量のhCG量で反応が出る検査薬です。
月経予定日から使用できるものですが、一般の妊娠検査薬とは異なり、薬剤師が在中する薬局やドラックストアで薬剤師からの説明・指導を受けなければ購入できません。
- 一般的な妊娠検査薬
月経予定日から1週間後の検査を推奨しています。
一般的な妊娠検査薬の精度は高くなっていますが、検査時期が早まると検査結果が異なる結果となることもあるのでタイミングを守って使用しましょう。
化学流産とは?
化学流産とは、受精卵はできたが、着床に至らなかった場合等の状態です。化学流産は月経との区別が難しいため、気づかない方も多くいます。
なぜここで化学流産についてお伝えしているかというと、妊娠検査薬で陽性反応があり、その後月経様の出血が起こった場合には、本来知ることがなかった化学流産を知ってしまう可能性があるからです。化学流産の原因はいまだ解明されていませんが、妊娠初期の流産は胎児の理由によるものが多いとされています。
産婦人科受診のタイミング
月経予定日から約1週間後の妊娠検査薬で陽性反応があったら、月経予定日から2週間頃までを目安に、早めに産婦人科へ受診しましょう。
正常に着床し、赤ちゃんが成長しているかを超音波エコーで見てもらう必要があります。
検査薬で陽性となっても、正常妊娠とは異なり、発育した受精卵が子宮内膜以外の場所に着床してしまう異所性妊娠(子宮外妊娠)の可能性もあります。
その場合には、特に慎重に経過をみて治療をしていく必要があり、状態によって手術が必要なケースもあります。安心して妊娠生活を過ごしていくためにも、早めの病院受診をおすすめします。
妊娠検査薬で陰性だったが、月経が来ない場合には、妊娠以外の理由による月経の遅れということになります。
子宮や卵巣の病気、生活習慣等様々ですが、治療が必要な場合もあるので、早めの受診をおすすめします。
まとめ
助産師として、これまで「妊娠」という場面で様々な女性に出会ってきました。
不妊治療をご夫婦で頑張っている方、流産を経験された方、中絶という選択をされた方…などなど様々です。妊娠は、子どもの命の誕生というとても大事なタイミングです。
しかし、その命を宿す女性にとっては、もっと大事な人生のタイミングだと思います。
妊娠を望む方にとっても、妊娠を望まない方にとっても、精神的状態は女性のホルモンバランスや自律神経に大きな影響を与えます。
過度なストレスがかからないような、準備や対策を日ごろから心がけられると良いですね。
キーワード:妊娠|想像妊娠|妊娠検査薬|化学流産|産婦人科
参考文献
日本産科婦人科学会 ・日本産婦人科医会- 産婦人科診療ガイドライン 産科編2020
病気がみえるvol.10 産科 第4版 メディックメディア
執筆者:高橋萌