令和5年の日本の総労働力人口に占める女性の割合は45.1%と働く女性が増え、同時に女性や妊産婦さんが働きやすい環境の整備が求められています。
働く妊産婦さんが活用できるものとして「母健連絡カード」というものがあります。
では、「母健連絡カード」とはどんなものなのでしょうか。具体例も交えながら解説していきたいと思います。
目次
❚まとめ
母健連絡カードとは?
「母健連絡カード」とは、「母性健康管理指導事項連絡カード」のことを言います。
主治医等が行った指導事項の内容を、妊産婦である女性労働者から事業主へ的確に伝えるためのカードです。妊娠中だけでなく、出産後も使用することができます。
産前産後は心身のさまざまな変化により、妊娠前と同じように仕事を続けるということが難しくなります。
無理をして働くことで母体やお腹の中にいる赤ちゃんにも悪影響を及ぼしてしまうことも考えられます。
不安を感じることがある場合は、健診の際に主治医に相談してみてください。
主治医から診断や指導を受けた上でその内容を「母健連絡カード」に記載・発行してもらい、事業主に申し出をしましょう。
母健連絡カードの使い方
①妊娠中または出産後の女性労働者は健康診査等を受診する。
②主治医等が、健康診査等の結果、通勤緩和や勤務時間短縮等の措置が必要であると判断した場合、「母健連絡カード」に必要な事項を記載して女性労働者に渡します。
③女性労働者は、「母健連絡カード」を事業主に提出し、措置を申し出る。
④事業主は、「母健連絡カード」の記載事項に従い、通勤緩和や勤務時間短縮等の措置を講じる。
提出された「母健連絡カード」の情報をもとに、事業主は、妊娠中または産後の女性労働者の勤務条件を調整することが求められます。
重い物を持つ作業を避ける、休憩時間・勤務時間の調整、勤務内容の見直しなどがあり、妊産婦さんが無理なく仕事を続けられるように配慮する必要があります。
母健連絡カード活用例
実際に「母健連絡カード」がどのように活用されているのか、いくつか例を見てみましょう。
- 体調に合わせた勤務時間の調整
妊娠初期はつわりがひどくなることが多く、妊娠前と同様の勤務体制が難しい場合があります。
妊婦さんは、つわりの程度を医師に診てもらい、母健連絡カードの発行をしてもらいます。
「勤務時間の短縮」という医師からの指導事項があった場合、事業主は勤務時間の調整を検討します。
例えば、朝のつわり症状が特に辛い方の場合、出勤時間を数時間遅くする、午後から勤務を開始するなどの対応が考えられます。
- 仕事内容の見直し
妊娠中期から後期にかけては、お腹が大きくなり動くこと自体がゆっくりになったり、辛く感じるようになってきます。
重い物を持つ作業や長時間の立ち仕事は妊婦さんにとって身体的に大きな負担がかかります。
このような場合も「母健連絡カード」を通して、妊産婦さんは、自身の身体への負担を減らしながら業務を継続出来るように、業務内容の調整を事業主に伝えることが出来ます。
妊娠中や産後は体だけでなく、心の変化も大きい時期です。ホルモンバランスの変化やライフスタイルの変化により、気持ちが不安定になりやすくなります。
カードの活用で妊産婦さんは、自身の不安やメンタル状況を事業主に伝えやすくなり、事業主も妊産婦さんの心理的な状況を理解しやすくなります。
まとめ
「母健連絡カード」は、妊娠中や産後の女性が安心して働ける環境を作るための大切なツールです。
このカードを活用することで、妊産婦さん自身は自分の健康を守りながら働くことができ、事業主も妊産婦さんが働きやすい環境作りや適切な対応を行うことができます。
*働くママへ*
同僚などに迷惑をかけられないと思う気持ちもあると思います。
しかし、妊産婦さん自身、会社の同僚、事業主、それぞれの皆さんのためにも、まずは自身の状況を理解してもらうことはとても重要です。
お腹の赤ちゃんの変化や、ママの体調の変化は、ママ自身にしか分かりません。
お腹の赤ちゃんのため、目の前の我が子のために、不安な気持ちや身体の不調があるときにはまず主治医に相談し、同僚や上司にも理解し協力してもらいながら過ごしていただきたいと思います。
キーワード:母健連絡カード|妊産婦|働くママ|使い方|活用例
参考文献
1)働く女性の状況 Ⅰ 令和元年の働く女性の状況 |厚生労働省
2)働く女性のこころとからだの応援サイト 妊娠出産・母性健康管理サポート|一般税談法人女性労働協会(厚生労働省委託事業)
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/renraku_card/
3)母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/josei/hourei/20000401-25-1.htm
執筆者:高橋萌