【助産師解説】「陣痛の痛み」は妊娠中の過ごし方で変わる!スムーズなお産ママの共通点!

 

「陣痛=痛い、怖い、大変」と思っている方がほとんどではないかと思います。

もちろん出産に痛みは伴いますし、初めての出産であれば未知の体験になるわけですから、怖いと感じる方は多いと思います。

二人目、三人目の出産であっても、経験したことがあるからこそ恐怖やトラウマなどを抱えている方もいらっしゃいます。

 

私はこれまで、多くの方の出産に立ち会わせていただきましたが、出産がスムーズに進む方には共通点があるように思います。

スムーズな出産に向けた妊娠中の過ごし方を、助産師の目線でお伝えできればと思います。

 


 

目次
陣痛の正体とは?

出産がスムーズに進むママの共通点
スムーズな出産のための妊娠中の過ごし方

まとめ

 


陣痛の正体とは?


一言でいうと、「陣痛=子宮の収縮」です。

子宮は筋肉(平滑筋)からなる臓器です。子宮筋の収縮は、交感神経と副交感神経という神経の活動によって行われています。

交感神経は、活動する時に働く神経で、副交感神経は、休息やリラックスをする時に働く神経です。

 

出産の時に、恐怖や不安、緊張が強いと交感神経の働きが過度に高まり、子宮の血管が収縮し血流が悪くなります。すると、子宮への酸素供給が低下してしまい、子宮収縮も低下、陣痛が弱くなってしまいます。

逆に、リラックスできている状態では、副交感神経が働き、子宮への血流、酸素供給が高まることで陣痛が強まり、分娩を進めてくれるというメカニズムがあります。

 

 

お産を進める良い陣痛とは?

 

「いい陣痛きてるよ!」「いい陣痛だね!」と助産師はよく口にします。いい陣痛って何??と思うかもしれませんが、“いい陣痛が来れば、お産は進む”これは鉄則です。

 

いい陣痛というのは、赤ちゃんが産道を通って生まれてくるために必要な強さや長さがあり、出産の経過に合わせて変化していく陣痛です。

途中で陣痛が弱くなってしまったり、なかなか陣痛が強くならなかったりすると、お産が長引いてしまい、ママの疲労がたまりさらに陣痛が弱くなる、長時間の出産に赤ちゃんも疲れてしまうという悪循環に陥ってしまいます。

 

ここまで聞くと、「いい陣痛=痛い陣痛??」とも捉えられてしまうかもしれません。痛みはもちろんありますが、完全にイコールではありません。

恐怖、不安、緊張などの要素が“痛み”に加わると、痛みをより強く感じてしまうということが知られています。出産は、まさに恐怖不安、緊張の要素の連続ですよね。

しかし、そのような中でも、痛みの感じ方を少しでもコントロールし、できるだけ痛みを和らげる方法を知っておくことがお産を乗りきるコツです。

 

 


出産がスムーズに進むママの共通点


いい陣痛が来る、出産をスムーズに進めるための大事な考え方を紹介します。

 

スムーズにお産が進むママたちの多くは、陣痛との向き合い方がとても上手な方々です。それは、陣痛を“ただ痛いもの”と捉えていないことです。
「痛いけど、赤ちゃんに会うための大事な痛み」
「赤ちゃんが生まれてくるのを助けてくれる痛み」
「私の出産を助けてくれるパワー」などと表現するママがいます。

 

陣痛を、赤ちゃんに会うための大事な痛みや助け、パワーと捉え味方にすることで、陣痛への恐怖心や不安から過度に痛みを感じる悪循環を断ち切ることに繋がります。

実際に、経腟分娩の場合、陣痛がなければ、赤ちゃんを出産することはできません。まさに、赤ちゃんが生まれるのを助け、ママが赤ちゃんを産むのを助ける大事なパワーなのです。

 

しかし、この捉え方は一朝一夕とはいきません。妊娠中から、お腹の赤ちゃんとたくさん会話をしながら、幸せな出産や赤ちゃんとの生活をイメージして過ごすことが重要です。

そして、陣痛を恐れず、赤ちゃんに会いたいという気持ちをどんどん高めてください。

 

 


スムーズな出産のための妊娠中の過ごし方


スムーズな出産のために、妊娠中からできる準備をしておくことが重要です。そうすることで、いざ陣痛が始まったときにも、冷静に対応することができます。

 

 

呼吸法の練習をしましょう

 

スムーズな出産に不可欠な要素の一つに呼吸法があります。赤ちゃんに酸素を届けるだけでなく、ママのリラックスにも効果があります。

入院をして助産師さんに言われて初めて呼吸に意識を向けることは、痛みの中では難しいこともあります。出産に向けて、妊娠中から呼吸法の練習をしておくことがおすすめです。

 

陣痛中は、赤ちゃんにもストレスがかかります。赤ちゃんにたっぷり酸素を届けるためには、ママの呼吸がとても重要になってきます。

息を吸うことではなく、吐くことに集中することがポイントです。たくさん吸おう、赤ちゃんに酸素を届けようと思うとつい吸うことに意識が向いてしまいますが、息をしっかり吐ききらないと吸うことはできません。

 

口をすぼめて、遠くにあるろうそくの火を消すように細く長く息を吐きます。全部吐ききるとスッと息が吸えますよね。鼻からスッと息を吸って、口からゆっくり細く長く吐ききる。

陣痛の波に合わせるイメージで、この呼吸を続けます。寝る前の数分や、一息つきたい瞬間に少しでもいいので毎日の生活の中に呼吸法の練習を取り入れてみてください。

 

 

バースプランを考えよう

 

バースプランは、妊娠中、そして出産、その後の育児をどのようにしていきたいかを考えるためのツールです。

成り行きのまま出産をし、育児をするのではなく、ママやパパがどうしたいのか出産や育児を主体的に考えることがスムーズなお産にとても大切です。

 

出産はゴールではなく、スタートです。赤ちゃんが生まれたら楽しくも慌ただしい日々がスタートします。

妊娠中のその時こそ、出産や出産後のことを時間をかけて考えられるチャンスです。

バースプランの考え方については他の記事で詳しく紹介していますのでぜひ参考にしてみてください。

【助産師解説】バースプランの役割は?後悔しないバースプランを考えよう!

 

 

自分に合うリラックス方法を見つけよう

 

出産までの妊娠中に、ご自身がリラックスできる方法を見つけておきましょう。

陣痛には、必ず波があります。痛みが来て、遠のくという周期が繰り返されます。痛みが遠のいている間に、少しでもリラックスすることがお産が進むコツです。

力を抜いてリラックスすることで、身体の緊張がほぐれ、副交感神経の働きが高まり、いい陣痛へとつながり、疲労も最小限に留めることができます。

 

アロマの香りや、お気に入りの音楽、いつも使っているタオルや抱き枕など、出産のときに持ち込めるリラックスアイテムなどを使うこともおすすめです。

呼吸法を生活の中で取り入れることができると、呼吸法自体がリラックスの方法にもなります。妊娠中に自分に合うリラックス方法を見つけておきましょう。

 

 


まとめ


いい陣痛、スムーズなお産のためにできることをお伝えしてきました。

妊娠中から準備をしておくことがスムーズなお産のカギとなります。そして、メンタルコントロールをすることで、お産を前向きに捉え、達成感に満ち溢れたお産へとつながります。

 

赤ちゃんと会える喜びや、ご家族で赤ちゃんを迎える楽しみな気持ちをたくさん持ちながら、出産のその時を迎えてもらえたらと思います。

 

 

キーワード:陣痛の痛み|妊娠中|過ごし方|スムーズなお産


参考文献
・周産期ケアマニュアル 第2版 立岡弓子


執筆者:高橋萌