【助産師解説】寒い時期に注意「乳幼児突然死症候群(SIDS)」とは

 

寒い冬を迎えるこの時期、赤ちゃんのいるご家庭では特に注意しなくてはいけないことがあります。

よく耳にする「乳幼児突然死症候群(SIDS)」は、元気に見えていた赤ちゃんが、ある日突然命を落としてしまうというものです。

その原因については未だはっきりと分かっておらず、日本での発症頻度はおおよそ6,000〜7,000人に1人と推定されています。

また、12月以降の冬期に発症する傾向が高いことがわかっています。

今回は、SIDSのポイントや対策について詳しく紹介していきたいと思います。

 



目次

乳幼児突然死症候群(SIDS)とは

SIDSの3つのポイント

SIDS対策のためにできること

まとめ

 


乳幼児突然死症候群(SIDS)とは


SIDSは、元気だった赤ちゃんがなんの予兆や病歴もなく、眠っている間に突然亡くなってしまうものです。

生後2か月から6か月の赤ちゃんに特に多く、まれに1歳以上で発症することもあります。

睡眠中に起こってしまうということもあり、小さなお子さんを持たれるママさんパパさんとしては不安を感じてしまうと思いますが、日常生活の中での注意点や対策を行うことでそのリスクを

軽減することもできるといわれています。

 

 


SIDSの3つのポイント


SIDSについての調査研究が世界各国で行われていますが、はっきりとした予防方法についてはまだ分かっていません。

ですが、これまでの研究などから、次の3つのポイントに注意することでSIDS発症の危険性を低くするということもいわれています。

 

 

1.1歳になるまでは、寝かせるときはあおむけで寝かせましょう

うつぶせ、あおむけどちらでもSIDSを発症する可能性はありますが、赤ちゃんを寝かせる際にうつぶせで寝かせた時の方がSIDSの発症率が高いということが分かっています。

寝かせるときは、赤ちゃんのお顔が天井に向くようにして寝かせるようにしましょう。

あおむけにすることで、睡眠時の窒息事故を防ぐことにもつながります。

 

 

2.できるだけ母乳で育てましょう

母乳育児は赤ちゃんにとって良いことがたくさんあることはよく知られているかと思います。

アレルギーや肥満のリスクが減ったり、知能と神経の発達を高めたりするなどの利点のほか、母乳を飲んでいる赤ちゃんの方がSIDSの発症率が低いということもあります。

母乳での育児が推奨されていますが、母乳栄養は、あくまでSIDSリスクを下げる一因子に過ぎません。

ママさんによっては母乳育児が難しい場合もあるかと思います。他の対策を行うことでリスクを減らすこともできますので、心配しすぎずお子さんを見守っていきましょう。

 

 

3.たばこをやめましょう

たばこはSIDS発症の大きな危険因子となります。

妊娠中の喫煙により、お腹の赤ちゃんの体重が増えにくくなったり、呼吸中枢にも良くない影響を及ぼします。

ママさん自身の喫煙はもちろんですが、妊婦や赤ちゃんのそばでの喫煙もやめることが重要です。

身近に喫煙されている方がいらっしゃる場合は、日頃から喫煙者に協力を求めるようにしましょう。

 

 


SIDS対策のためにできること


SIDSのリスクを下げるために、日常生活に取り入れられる対策をいくつかご紹介させていただきます。

 

 

1.あおむけでの睡眠を心がける

先に説明した通り、あおむけでの睡眠が重要になります。

1歳を迎えるまではあおむけでの睡眠を心がけるようにし、赤ちゃんが呼吸のしやすい体勢で眠れるようにしましょう。

寝返りができるようになり、「寝返り返り」ができる赤ちゃんであれば、睡眠時の体勢が変わってしまってもそのままで良いとされています。

一方向の寝返りしかできない場合は、ママさんパパさんの気づいたときにあおむけへ戻してあげてください。

 

 

2.安全な寝床に整える

赤ちゃんの寝具は、枕・マットレス・敷布団であれば固くて平らなもの、掛け布団は軽いものにするか、スリーパーなどを活用してください。

赤ちゃんの頭の形や動きに合わせて凹んでしまうものは窒息するリスクが高くなってしまいますし、寝返りもしにくくなってしまいます。

ベビーベッドは、PSCマーク(国が定めた安全基準に合格したものに示すもの)が貼られたものを選ぶようにしましょう。

 

また、同じ部屋で眠るようにはしますが、赤ちゃんとは睡眠スペースを分けることが必要です。

添い乳をしたり、赤ちゃんを寝かせているときに寝落ちをしてしまうこともあるかと思いますが、ママパパが目を覚ましたタイミングで赤ちゃんを睡眠スペースに戻してあげましょう。

また、赤ちゃんの睡眠スペース周辺にぬいぐるみやクッションなどの柔らかいものを置かない、ベビーベッドの柵は必ず上げておくということも大切です。

 

 

3.赤ちゃんをあたためすぎないようにする

寒いかなと思い、つい厚着をさせたり、布団をかけすぎたりしていませんか?

赤ちゃんの体温が上がり熱が体にこもってしまうと、SIDSによる死亡のリスクが高くなってしまいます。

赤ちゃんの肌を触って熱いなと感じたり、汗をかいているような場合は服装や室温などを調節するようにしましょう。

また、赤ちゃんの帽子や頭を覆うものは、室内では使わず外出時に使うようにしてください。


赤ちゃんは、基本的に大人より体温が高いです。

新生児のころは「大人より1枚多く」、生後1か月からは「大人と同じ枚数」、生後3~4か月からは「大人より1枚少なく」が目安になります。

また、赤ちゃんの手足は冷たくても問題ありません。

手足から身体の熱を放熱しコントロールしています。

ミトンや靴下は、外に出る際は良いですが、暖房がついている室内では不要です。

 

4.腹ばいで遊ぶ時間をつくる

睡眠時のうつぶせは避ける必要がありますが、赤ちゃんが起きている時にはママさんパパさんが見守っている中でうつぶせで遊ばせる時間を作ってみましょう。

アメリカ小児科学会では、『Back to sleep,Tummy to play(眠る時は仰向けに、遊ぶ時はうつぶせに)』と、うつぶせ時間を推奨しています。

 

うつぶせ遊びの時間を英語でタニ―タイム(tummy time)と言います。

感覚や運動の発達を促し、頭の変形を防ぐ効果もあるといわれています。

新生児のうちから行っていただいて問題ありません。

 

初めは1日2~3回、3〜5分程度からはじめ、オムツ替えや授乳後、日中の機嫌が良い時に取り入れてみてください。

成長や発達とともに徐々に時間を増やしてみましょう。

赤ちゃんの機嫌と体調が良い時に、ぜひ試してみてください。

 

 


まとめ


SIDSを発症する原因についてはまだはっきりと分かっていないものの、リスクを減らすためのポイントや対策はさまざまなところで呼びかけられています。

乳幼児突然死症候群は今もなお世界各国のご家庭で起こりうる痛ましいものです。

今回ご紹介させていただいた対策をすべてを完璧に行うことは難しいと思いますが、赤ちゃんの成長を楽しみながら対策の必要な部分は取り入れていくようにしていただければと思います。

 

 

キーワード:乳幼児突然死症候群|SIDS|対策


参考文献

1)政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201710/2.html

2)こども家庭庁 普及啓発用リーフレット

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2fdd400-7af4-456b-b278-cd4ccd287229/879cf0ee/20230401_policies_boshihoken_kenkou_sids_11.pdf

3)safe to sleep
https://safetosleep.nichd.nih.gov/reduce-risk/reduce

4)Back to Sleep, Tummy to play. American Academy of Pediatrics.

https://www.healthychildren.org/English/ages-stages/baby/sleep/Pages/Back-to-Sleep-Tummy-to-Play.aspx


執筆者:高橋萌